和束の一年
今回は和束のお茶がどのような一年を送るのかをご紹介します。
【目次】
4~5月 準備~新茶の収穫
5月初めごろから新茶の収穫が始まります。
特に立春から八十八夜の新茶は高値で取引されるので、農家さんたちはこの日にむけて作業を進めます。
具体的に何をするの?
前回のブログに上げたこの写真
〇をしたところの「黒いのは何だろう?」と思った方がいると思います。
これはテックスというもので、化学繊維でできた寒冷紗です。
(厳密には寒冷紗ではないと農家さんから聞きました。)
新芽が出てきて、ころあいを見計らってこのテックスで茶園を覆いかぶせます。
これを覆い下栽培といいます。
どうして覆うの?
その理由は、
①葉に含まれるテアニンが日光をあびるとカテキンに変わるからです。
テアニンとは、うま味成分のことでダシなのどに含まれるアミノ酸の一種です。
カテキンとは、お茶の苦み成分で抗酸化作用があり、体組織の老化を防ぐ作用があります。
苦みであるカテキンを少なくし、葉に含まれるテアニンが多く保つようにするためにこのような作業をします。
②テックスで覆うことで、葉は少ない光で光合成しようとします。少ない光から多くの光をうけるために表面積を広げ成長します。こうすることで、収穫高が上がります。
また、覆わない葉にくらべて薄くなり煎茶をつくる工程の「揉み」がしやすくなり、より上質な製品に仕上がります。
直掛け栽培と棚がけ栽培
覆い下栽培には2種類あります。
それが直掛け栽培と棚掛け栽培です。
こちらがその直掛け栽培です。
黒色と銀色のものがありますが、役割としては同じです。
しかし、銀色の方にはアルミが編み込まれており、紫外線をカットしています。
この直掛けで栽培されたものが、「かぶせ茶」や抹茶の原料となる「碾茶(てんちゃ)」
になります。
この作業はすべて手作業で行われます。
このように洗濯ばさみで枝に止めます。
次にこちらが棚掛け栽培です。
茶園が見えないように覆います。かつては、霜よけのためにワラやヨシズで覆っていました。
現在では、防霜ファンが普及し、特に高級な玉露や碾茶を生産するために使われています。
支柱についている扇風機みたいなのが防霜ファンです。
被せたあとの作業
テックスで覆ったあと、葉の成長をみて収穫します。
収穫は画像のように行い、袋にたまった葉を工場へ運びます。
特にこの時期は、急いでいる軽トラックがいっぱい走っているので、お越しの際はご注意ください。
急ぐ理由は、葉は刈り取られてから、すぐに腐りはじめます。なので、農家さんは1分1秒でも速く工場へ持って行きたいと考えています。
6~7月 二番茶に向けて
新茶の収穫が終わると、二番茶の収穫に備えて、肥料やり、消毒作業、除草作業などの管理作業が始まります。
この時に、「刈りなおし」という作業もします。これは次に出てくる新芽が均一に出るように茶園の表面を散髪することを言います。
他にも「裾刈り」という作業があります。茶園は上に伸びるだけでなく、よこにも伸びます。よこに伸びつづけると園の中に入って作業をしにくいだけでなく、テックスをかける際に、葉が邪魔をして止めづらくなってしうので、園のよこを刈り揃えます。
次に「深刈り」についてご説明します。
このように深く刈りこんで園を低くします。
こうすることで、茶を休ませることと、自分たちが作業をしやすくさせることができます。
これらの作業をしながら芽がでてきたら、4~5月の作業を繰りかえします。
豆知識
近年の抹茶スイーツのブームと海外の健康ドリンクとしての抹茶が、碾茶生産に火をつけています。
碾茶の生産は、少ない日光で生育するため茶園が疲弊してしまいます。
これが原因で一番茶の収穫後は深刈りをした茶園が多く見受けられるようになっています。
8月 アツいから少し休憩
この時期の昼間は大変熱いので、朝の早い時間と夕方の涼しい時間帯に管理作業をします。
二番茶がおわると、テックスのかかっている茶畑はほとんどなくなり、きれいな緑色の畑をご覧いただけます。
ただ、めちゃくちゃι(´Д`υ)アツィー
この頃になると、よく天気のニュースで耳にする、PM2.5や黄砂がないので空も澄んでて私はおすすめします。
9月~11月 最後の収穫秋番茶
この秋番茶では、覆い下栽培は行いません。旬がすぎ、取引価格が作業効率に見合わなということが一つの理由です。
また、この秋番茶はペットボトル飲料の原料になることが多いときいています。
12~3月 来年に備えての準備
タイトル通り、来年の収穫に向けての管理作業を行います。
そして、和束茶ブランドで売り出している農家さんは営業活などをされています。
おわりに
農繁期である5~6月に新茶を楽しみに和束へ来てくれるお客さんがたくさんいますが、前述したようにテックスがかかってる茶畑が多く、緑が広がる景色を楽しみにして来た方はがっかりして帰られます。
涼しく感じられてくる10月以降に来ていただくことをおすすめします。
正しい知識を身につけてもらって、和束を楽しんでいただきたいと思います。